日本から海外へ中古車を輸出するビジネスは、高い品質を誇る日本車への需要に支えられ、安定した市場を形成しています。
年間の自動車輸出台数においても中古車は大きな割合を占めていますが、成功の鍵を握るのは各国の輸入規制を正確に把握することです。
本記事では、2026年時点の最新情報に基づき、国別の年式、ハンドル、関税などの主要な規制を網羅的に解説します。
中古車輸出で失敗しないために!まず各国の輸入規制の確認が重要
中古車を海外へ輸出する際、最も重要なのが輸出相手国の輸入規制を事前に確認することです。
規制を知らずに輸出した場合、港で通関が許可されず、車両を日本へ送り返すか、現地で廃棄せざるを得なくなる可能性があります。
そうなると、輸送費や手続き費用が全額損失となるだけでなく、多額の違約金が発生するリスクも伴います。
日本からの中古車輸出ビジネスで失敗を避けるためには、規制の事前調査が不可欠です。
【エリア別】中古車輸出の国別規制一覧
中古車の輸出規制は国や地域によって大きく異なります。
年式やハンドルの位置、排気量といった車両の基本的な仕様から、船積前の検査義務の有無まで、その内容は多岐にわたります。
ここでは、主要な輸出先をエリア別に分け、それぞれの国が設けている具体的な輸出規制の概要を解説します。
仕入れや輸出計画を立てる際の基礎情報として活用ください。
アジアの主要な輸出先国における規制
アジア地域では、国ごとに自動車の輸入規制が異なります。パキスタンでは、2025年10月1日より車齢5年までの中古車の商業輸入が認められており、2026年1月には個人輸入の規制が厳格化されましたが、個人名義でのギフトスキームなどは継続されています。 また、モンゴルでは、首都での新規登録において製造から10年以上経過した車両には2025年6月1日よりナンバープレートが発行されない方針が施行されており、 右ハンドル車の輸入制限も導入されています。
バングラデシュは製造から5年以内、フィリピンは原則として輸入が禁止されていますが、一部の特別許可や例外が存在します。このように規制は多様なため、個別の確認が欠かせません。
アフリカで人気の輸出先国における規制
アフリカは日本の中古車にとって一大市場ですが、年式規制を設けている国が多数存在します。
特に主要な輸出先であるケニアでは、初年度登録から8年以内の車両でなければ輸入できません。
製造年月と登録年月の差が1年未満である必要もあります。
また、タンザニアは10年以内、ウガンダは15年以内という規制があります。
また、これらの国の多くでは、船積前検査が義務付けられており、合格証明書がなければ通関できないため、車両のコンディション維持と事前の手続きが重要になります。
JEVIC、EAA、QISJ、JAAIなどがあります。
JEVICは多くの国で認定されている代表的な検査機関であり、EAAは主にタンザニア、ザンビアなど東アフリカ諸国向けの検査、QISJはケニアなどの検査を実施しています。
JAAIはタンザニアなどの検査を実施しています。
オセアニア・北米・南米の輸出先国における規制
オセアニアでは、ニュージーランドが代表的な輸出先ですが、排ガス基準(ユーロ4相当以上)や横滑り防止装置(ESC)の装着義務など、環境・安全基準が厳しいことで知られます。
北米のアメリカには、製造から25年を経過した車両はクラシックカーとして輸入が許可される「25年ルール」が存在します。
一方、チリをはじめとする南米の多くの国では、交通インフラが左ハンドル基準のため、原則として右ハンドル車の輸入は認められていません。
ヨーロッパ・その他の地域の輸出先国における規制
ヨーロッパでは、イギリスやアイルランド、マルタ、キプロスといった右ハンドル国が主な輸出先となります。
これらの国はEU加盟国も多く、厳しい排ガス基準(ユーロ基準)を満たす必要があります。
中東のUAE(ドバイ)は、周辺国への中継貿易拠点として大きな市場ですが、事故車に対する規制が厳しい傾向にあります。
また、かつて大口の輸出先であったロシアは、近年の情勢変化により関税が大幅に引き上げられるなど、輸出環境が大きく変動しています。
中古車輸出で必ず確認すべき3大規制ポイント
国ごとに多岐にわたる中古車の輸入規制ですが、特に注意すべきは「年式」「ハンドル位置」「車種」の3点です。
これらのポイントは、輸出の可否そのものを決定づける最も基本的な要素であり、一つでも条件を満たせない場合は通関できません。
中古車を仕入れる前段階で、輸出を希望する国の三大規制を必ず確認することが、ビジネスリスクを回避する第一歩となります。
製造年からの経過年数を制限する「年式規制」
年式規制は、車両が製造されてから何年以内まで輸入を許可するかという制限です。
多くの国で環境保護(排ガス規制)や道路の安全確保(老朽車の排除)、国内の自動車産業の保護を目的として導入されています。
例えば、バングラデシュでは製造から5年以内、ケニアでは8年以内と定められており、この期間を超えた車両は原則として輸入できません。
仕入れの際には、車両の初年度登録年月日を正確に確認し、輸出先国の規制年数を超えていないか照合することが極めて重要です。
この規制は頻繁に変更される可能性もあります。
輸入が禁止される場合もある「左右のハンドル位置」
車両のハンドル位置は、その国の交通インフラ(右側通行か左側通行か)に直結するため、非常に厳しい規制が敷かれています。
日本は左側通行のため右ハンドル車が主流ですが、アメリカやヨーロッパ大陸、南米、アフリカの多くの国は右側通行であり、左ハンドル車が基本です。
これらの国々では、安全上の理由から右ハンドル車の輸入が原則として禁止されています。
輸出先が右ハンドル車を許可しているかどうかの確認は、最も初歩的かつ重要なチェック項目です。
また、逆に右ハンドルのみの輸入国として代表的なのはスリランカです。
スリランカはイギリスの植民地支配により、交通システムがイギリス基準(左側通行・右ハンドル)で整備されているため、原則として右ハンドル車のみの輸入が許可されています。
国によって異なる「排気量や車種の制限」
年式やハンドル位置に加えて、排気量や車種に関する制限も存在します。
一部の国では、排気量が大きくなるほど高額な関税が課される累進課税制度を導入しており、コストに大きな影響を与えます。
また、環境規制の観点からディーゼル車の輸入を禁止したり、特定の車種の輸入を制限したりする国もあります。
商用車であるトラックやバスは乗用車と異なる規制が適用されるケースも多いため、輸出する車種に応じた詳細な確認が必要です。
輸出コストを大きく左右する関税・税金について
中古車輸出ビジネスの採算性を判断する上で、車両本体価格や輸送費と同様に重要なのが、輸出先の国で課される関税や各種税金です。
これらの税金は国によって税率や計算方法が大きく異なり、時には車両価格を上回るほどの高額になることもあります。
利益を確保するためには、これらのコストを事前に正確に把握し、販売価格に反映させる必要があります。
輸出先の国で課される関税率の確認方法
関税率を調べる最も確実な方法は、JETRO(日本貿易振興機構)のウェブサイトで各国の関税情報を確認するか、現地の通関業者や輸入パートナーに直接問い合わせることです。
多くの国の関税は、車両のCIF価格(商品代金+保険料+運賃)やエンジン排気量、製造年などを基準に算出されます。
税率は政治・経済情勢によって予告なく変更される可能性があるため、必ず船積みの直前に最新の情報を再確認することが推奨されます。
関税以外に発生する諸費用や税金の概要
輸出先の国では、関税以外にも様々な費用や税金が課されます。
代表的なものに、日本の消費税に相当するVAT(付加価値税)や物品税、港湾使用料、通関手数料、国内輸送費などがあります。
これらの諸費用は、最終的な輸入コストの大きな部分を占めることも少なくありません。
中古車輸出の事業計画を立てる際には、関税だけでなく、これらの付帯的なコストも漏れなくリストアップし、総費用を算出することが不可欠です。
また、FOBは「商品代金+輸出港までの費用」で、輸送費は輸入者負担。
CIFは「商品代金+運賃+保険料」で、輸入港までの費用を輸出者が負担するなどの知識も必要だと考えます。
多くの国で義務付けられている船積前検査(PSI)とは
船積前検査(Pre-Shipment Inspection, PSI)とは、輸出される中古車が輸入国の定める安全・環境基準を満たしているか、また、インボイス価格が適正であるかなどを、船積み前に第三者機関が検査する制度です。
アフリカやカリブ海諸国など多くの国で義務化されており、この検査に合格しなければ輸出許可が下りません。
代表的な検査機関にはJAAI(日本自動車査定協会)やJEVIC(日本輸出自動車検査センター)などがあり、国によって指定の機関が異なります。
証明書の発行には費用と時間がかかるため、早めの手配が必要です。
他にもEAAやQISJなどもあります。
原則として中古車の輸入が禁止・制限されている国
世界には、国内の自動車産業の保護や環境問題への配慮から、原則として中古車の輸入を禁止、あるいは極めて厳しく制限している国があります。
例えば、中国、インドネシア、タイ、ベトナム、インドなどがこれに該当します。
これらの国では、外交官車両や特別な許可を得た場合を除き、一般の中古車を商業目的で輸入することは事実上不可能です。
ビジネスの対象国を選定する初期段階で、こうした輸入禁止国をリストから除外しておくことが重要です。
最新の情報はJETROなどで確認する必要があります。
国別の中古車輸出規制に関するよくある質問
中古車輸出の実務においては、規制の細かな点や最新の動向について多くの疑問が生じます。
ここでは、事業者から寄せられることの多い質問とその回答をまとめました。
輸出計画の具体化やトラブルの未然防止に役立ててください。
輸出規制の情報はどのくらいの頻度で更新されますか?
規制は各国の政策により予告なく頻繁に変更されるため、輸出の都度、最新情報の確認が必須です。
特に開発途上国では、数ヶ月単位で年式規制や関税率が変更されることもあります。
JETROや現地の輸入業者、フォワーダーや乙仲から常に最新の情報を入手するようにしてください。
電気自動車(EV)やハイブリッド車にも特別な規制はありますか?
はい、EVやハイブリッド車には優遇措置や特別な規制が存在する国があります。
環境対策として関税が免除・軽減される場合がある一方、バッテリーの安全性に関する独自の基準やリサイクル義務を設けている国もあります。
これらの車両を輸出する際は、専用の規制を確認することが重要です。
輸出を検討している国の規制が一覧にない場合の調査方法は?
JETRO(日本貿易振興機構)のウェブサイトで基本情報を確認し、輸送を依頼するフォワーダーや乙仲、現地の輸入パートナーに直接問い合わせるのが最も確実です。
彼らは実務に即した最新の規制や通関手続きの情報を持っています。
相手国の税関のウェブサイトも信頼できる情報源となります。
まとめ
中古車輸出ビジネスを成功させるためには、輸出先国の輸入規制を正確かつタイムリーに把握することが不可欠です。
年式、ハンドル位置、車種制限といった基本的な規制から、関税・税金、船積前検査の要件まで、確認すべき項目は多岐にわたります。
規制は常に変動する可能性があるため、継続的な情報収集が事業の安定化につながります。
これにより、リスクを管理し、輸出台数の増加を目指すことが可能になります。
経歴
カービューにて中古車輸出プラットフォーム「Tradecarview(現TCV)」を立ち上げ
中古車輸出未経験企業を含め、1,000社以上の輸出支援を実施
楽天グループにて海外EC展開・越境販売を推進
中古車輸出企業「カーペイディーエム」を創業し、豊田通商へ事業売却(M&A)
中古車輸出プラットフォームの立ち上げ・海外展開・M&A実績を持つ。
これまで1,000社以上の中古車輸出を支援。