💡 この記事でわかること
- 5年ぶりの輸入再開で変わったスリランカ市場の前提条件
- 「製造から3年以内」という年式制限が仕入れに与える影響
- 50%サーチャージやSSCLを含む課税構造と採算計算の考え方
- 決済・パーミット・政策変更という3つの実務リスクと備え方
- 燃費重視へ動いた現地需要と、狙うべき車種の見極め方
5年です。2020年3月から2025年2月まで、スリランカへの自動車輸入は原則として止まっていました。国が丸ごと「新車も中古車も入ってこない」状態に置かれていた、ということです。
その市場が、また動き出しました。ただし、戻ってきたのは以前と同じスリランカではありません。世界でも指折りに厳しい「製造から3年以内」という年式制限。車両本体より税金のほうが高くなる課税構造。そして、予告なく変わる規制。ここを理解しないまま船積みすると、現地で通関できず、在庫が海の上と港で止まります。
この記事では、再開後の市場の動き、規制と税金の中身、決済やパーミットまわりの実務リスクまで、仕入れの判断にそのまま使える形で整理します。輸出の全体像から確認したい方は中古車輸出ビジネス完全ガイドも合わせて読んでください。
5年ぶりに再開したスリランカの中古車輸入|先に知っておいてください
2020年3月、スリランカは外貨準備高の減少を理由に自動車の輸入を原則禁止しました。理由が「需要がない」ではなく「外貨がない」だった点が重要です。つまり需要は消えていません。ただ買えなかっただけです。
その制限が、2025年2月から段階的に解除されました。乗用車、バン、バス、トラック、農業用トラクターなど、カテゴリーごとに官報(Gazette)で対象HSコードが示され、順番に開いていく形です。日本側では、これに合わせてスリランカ向けの輸出前検査(船積み前検査)も再開されています。
ここを甘く見ないでください。スリランカ向けは、認定検査機関による検査証がないと現地通関で止まる可能性があります。オークションで落として、船を押さえて、検査を忘れる。これが一番もったいない失敗です。1台あたりの損失は、保管料と滞船・返送コストを含めて簡単に数十万円規模になります。
加えて、スリランカは右ハンドルの国です。日本の在庫がそのまま走れる市場は、世界のなかでも限られています。だからこそ日本車のシェアが高く、規制が開けば一気に需要が向いてくる。需要は最初からある市場なので、勝負を決めるのは「規制に合う玉を、合うタイミングで押さえられるか」だけです。

輸入再開で激変!スリランカ中古車市場で押さえるべき3つのトレンド
5年ぶりの再開で、市場の中身は再開前とはっきり変わりました。溜まっていた需要が一気に出てきた一方で、経済状況と新しい税制が「買える人」と「選ばれる車」を絞り込んでいます。順番に見ていきます。
繰り越し需要(ペントアップ・デマンド)は、いま表に出てきています
買い替えを我慢していた層が、2025年2月の再開を機に動き始めました。5年間、新しい車が1台も入っていないわけですから、現地の車はその分だけ古くなっています。現地ディーラーやバイヤーからの問い合わせが増えているのは、この「繰り越し需要」が正体です。
ただ、ここで勘違いしやすい点があります。需要が戻ったからといって、全価格帯が動いているわけではありません。「製造から3年以内」しか入ってこないので、一次流通で買えるのは現地の富裕層が中心です。日本中古車輸出業協同組合のレポートでは、2025年時点で、製造3年未満のヤリスをスリランカへ輸入した場合の現地店頭価格が900万スリランカ・ルピー台後半(約500万円)になる見込みと示されていました。
同レポートでは、富裕層の平均乗り換えサイクルは3年程度で、その使い終わった車を中間層が買い、さらに中間層が使い終わった車を低所得層の一部が買う、という流通の階層が示されています。つまり日本から入る新しい玉は、現地の中古市場全体を上から押し上げる燃料です。ここが分かっていると、「なぜ高年式・高価格の玉ばかり引きが強いのか」が腹に落ちます。
燃費重視へシフト。軽自動車とEVの引きが強まっています
以前のスリランカ市場は、トヨタ アクアやホンダ ヴェゼルといったハイブリッド車が主役でした。この人気自体は今も続いています。ただそこに、燃料価格の高騰という現実が乗ってきました。
結果として、スズキ ワゴンRやアルトのような日本の軽自動車、そして日産リーフのような電気自動車(EV)への関心が強まっています。排気量が小さいほど物品税の負担が軽くなる税構造も、この流れを後押ししています。1,000ccクラスのコンパクトカーが強いのは、好みの話ではなく計算の結果です。

スリランカで「燃費が良い」は嗜好ではなく、税金と燃料代から逆算された生活防衛の条件です。国内相場だけを見て「軽は輸出向きじゃない」と決めている社長は、ここで機会を落としています。ボディカラーも、白・シルバー・パールなど無彩色系が無難に動きやすい市場です。派手な色は在庫回転で不利になりやすい、と考えておいてください。
日本のオークション相場も動きます。ここで差が出ます
スリランカ向けが本格化すると、日本国内のオークション相場にも影響が出ます。輸入条件である「製造から3年以内」に合致する玉は数が限られているので、そこに需要が集中すれば当然価格は上がります。
逆方向も起こります。スリランカ側で税負担が増える動きが出ると、現地の店頭価格が跳ね上がり、バイヤーの手が止まります。実際、2026年5月に一時的な追加サーチャージが導入された局面では、スリランカ向け需要が強い車種で業者オークションの買いが一時的に弱まる、という指摘が出ていました。
ここが実務のポイントです。輸出の仕入れは、現地の税制ニュースと国内相場を同じ画面で見る必要があります。「安く買えたから利益が出る」ではなく、「その玉が、その税率で、現地でいくらになるか」で決まる。相場が高いときに無理に在庫を積んで、規制が動いた瞬間に出口を失う。これが一番よくある詰まり方です。
輸出業者が必ず押さえるべきスリランカの輸入規制と税金
ここが本題です。以前のスリランカを知っている方ほど、知識のアップデートが必要です。年式制限と課税構造、この2つが仕入れ可否と価格設定に直結します。
「製造から3年以内」——ここを間違えると危険です
乗用車については「製造から3年以内」という、世界でも屈指に厳しい年式制限がかかっています。3年ですから、対象になるのは直近3年の製造車だけ。たとえば今の時点で船積みを考えるなら、2023年以降に製造された車両が対象という計算になります。
この「製造」という言葉を、初度登録と混同しないでください。日本のオークションで見えるのは初度登録年月です。年末に製造されて翌年に登録された車は、書類上の年式より製造年が1年古い。これで落ちた案件は本当にあります。仕入れの段階で、製造年月が確認できる資料まで押さえる。ここは面倒でも省略してはいけない工程です。
もう一つ、実務でよく問題になるのが「基準日」です。落札日か、船積日か、現地到着日か。3年の境目に近い玉は、たった数週間で可否が変わります。境界付近の車両を扱うときは、現地の通関業者・バイヤーと基準の取り方を事前に文書で確認してから買う。これだけで無駄な損失は減ります。
逆に言えば、年式制限が将来的に緩和される方向へ動けば、仕入れ対象は一気に広がります。規制のウォッチは、リスク管理だけでなくチャンスの検知でもある、ということです。
茶谷’s POINT
スリランカ向けで年式ぎりぎりの車を扱うなら、私は「3年以内だから買える」で判断せず、船の遅れまで含めて余裕を取ります。規制の境目に近い車は、数週間のスケジュール変更で条件から外れる可能性があるからです。高く売れそうな1台でも、期限ぎりぎりなら無理に仕入れない。こういう市場では、利益幅より先に「予定どおり着かなかったときの逃げ道」を見ておきたいところです。

50%サーチャージとSSCL。税金が車両価格を超える話です
スリランカの車両課税は、日本の感覚では想像しにくい水準です。ざっくり言うと、CIF価格をベースにした関税(CID)に、関税額に対する50%のサーチャージが上乗せされ、そこへ排気量(cc)またはモーター出力(kW)で決まる物品税、高額車には奢侈税(Luxury Tax)、そして最後に付加価値税(VAT)が乗ります。
ここで一点、誤解が多い部分を整理します。話題になった「50%サーチャージ」は、車両価格そのものに50%が乗るという意味ではなく、関税額に対して50%が加算される構造として案内されています。それでも負担は軽くありません。関税の実効負担が上がり、その上に物品税とVATが積み上がる「掛け算」の構造だからです。
さらに、社会保障貢献税(SSCL)が2026年4月以降、輸入時に通関で徴収される形で課される運用になったと案内されています。率は2.5%と小さく見えますが、これが課税ベースの合計額(CIF+関税+サーチャージ+物品税など)に乗るため、最終価格への効き方は数字の見た目より大きくなります。
税金の合計が車両本体の価格を超えるのは、スリランカでは例外ではなく標準です。だから採算計算は「仕入れ+船賃+諸経費」では終わりません。現地の着地価格まで置いて、そこから逆算して初めて商談になります。ここを省いて見積を出すと、バイヤーから「話にならない」と言われて終わります。
自家用車から商用車まで、カテゴリー別の解禁状況は同じではありません
輸入解禁は一律ではありません。自家用の乗用車、バンやダブルパーパス車、公共交通用のバス、貨物用のトラック、農業用トラクター。カテゴリーごとに段階的に開いており、認められる年式の上限も、適用される税率も違います。
実務上の意味はこうです。乗用車が3年でも、別カテゴリーの車両はもう少し長い年式が認められる場合があります。つまり、乗用車では手が出ない年式帯の在庫が、カテゴリーによっては出口を持つ可能性がある。長期在庫を抱えている社長にとって、ここは見逃せない論点です。
特に商用車は経済活動に直結するため、政策の優先順位が自家用車と違う扱いになることがあります。取り扱う車両がどのHSコード・どのカテゴリーに入るのかを最初に確定させ、そのカテゴリーの年式条件と税率で採算を組む。順番を逆にすると、買ってから出口を探すことになります。
スリランカ向け輸出で注意すべき実務上の3つのリスク
規制と税金をクリアしても、それだけでは終わりません。経済危機を経た金融システム、独自の取引慣行、そして政策の不安定さ。この3つは、書類がそろっていても案件を壊します。
信用状(L/C)は使える?決済条件を甘く見ないでください
経済危機以降、スリランカの銀行が発行するL/Cについて、日本側の銀行が受理に慎重になるケースが増えました。以前と同じ感覚で「L/Cだから安心」と考えるのは危険です。
現実的な対策は3つです。1つ目、電信送金(T/T)による前払いを条件にする。2つ目、取引実績のある相手だけに絞る。3つ目、L/Cを使うなら、開設できる銀行と条件を自社の取引銀行と事前に詰めておく。船積みしてから決済でつまずくと、車は相手国の港にあり、代金は手元にない、という最悪の形になります。
もう一つ覚えておいてほしいのが、L/Cの開設日が税制の適用を分けることがある点です。2026年5月に導入された一時的なサーチャージでは、一定日以前にL/Cを開設した案件は適用外とする案内が出ていました。契約日・L/C開設日・船積日を全部記録しておく。あとで「いつの条件で入ったのか」を証明できるかどうかが、利益を守ります。
輸入許可証(パーミット)という仕組み、知ってますか?
スリランカには、公務員や海外で働くスリランカ人に対して自動車の輸入を特別に認める輸入許可証(パーミット)の制度があります。輸出側から見ると、このパーミットを持つ個人を通じて車を売る形になります。
正規のルートの一つですが、注意点があります。パーミットの名義人と、実際に乗る人・お金を出す人が別、というケースが出てくることです。名義と実需が分かれると、支払いが遅れたときに誰に請求するのか、車の受け取りは誰の責任か、が曖昧になります。
だからパーミット絡みの案件では、契約書に「誰が買主か」「代金は誰から、いつ入るか」「名義変更や受け取りの責任範囲」を必ず書き切ってください。口約束で走ると、揉めたときに何も残りません。
突然の規制強化。外貨準備高と連動するリスクを読む
スリランカの輸入政策は、国の外貨準備高と直結しています。過去の輸入禁止措置も、原因は外貨不足でした。裏を返せば、外貨が細ればまた締まる、ということです。
実際、再開後も動きは続いています。2026年4月に強化された自動車輸入規制が、日本の業界団体などの申し入れを受けて一部撤回された、と業界紙で報じられました。2026年5月には、期間を区切った追加サーチャージが官報で導入されています。予告があるとは限らないし、期間が延びることもある。これがスリランカ市場の性格です。
備え方は地味です。スリランカ中央銀行が出す経済指標、官報、現地バイヤーからの情報を継続して見る。そして在庫を一国に集中させない。仕入れの何割をこの市場に賭けるのかを、あらかじめ決めておくことです。各国の輸入制度や規制の一次情報を確認する入口としては、JETROが公開している国・地域別の貿易制度情報も使えます。
「自社だけで各国の規制を追い続けるのは正直きつい」——これは多くの社長から聞く話です。海外販売を検討中の方、掲載を考えている販売店は気軽にご相談ください。手持ちの在庫車がどの国に出せそうか、輸出可能性の診断も承っています。

スリランカ中古車輸出の再開に関するよくある質問
輸入再開後、市場は具体的にどう変わりましたか?
5年分の需要が溜まっていたので、市場は明確に活発化しました。ただし「製造から3年以内」の年式制限と高い課税があるため、取引は高年式・高価格帯が中心です。買えるのは主に富裕層で、その車が中古として中間層へ流れていく構造になっています。加えて燃料費の高騰で、燃費の良い軽自動車やEVへの関心が強まりました。安い玉を大量に流す市場ではない、と理解しておくのが正解です。
日本の輸出業者が最も注意すべき規制や税金は何ですか?
まず「製造から3年以内」の年式制限です。ここを外すと通関できず、損失が確定します。次に課税構造。関税に上乗せされる50%のサーチャージ、排気量やモーター出力で決まる物品税、奢侈税、VAT、そして2026年4月以降は通関時に徴収されるSSCL。これらが積み上がって、税額が車両本体を超えることも珍しくありません。現地の着地価格から逆算して採算を組んでください。
いま特に需要が高い日本の中古車は何ですか?
従来から強いハイブリッド車に加えて、燃料価格の高騰を背景に、スズキ ワゴンRやアルトといった低燃費の軽自動車、そしてEVへの需要が高まっています。物品税が排気量で決まるため、1,000ccクラスのコンパクトカーは価格面でも有利です。ただし年式制限があるので、いずれも対象となる高年式モデルが取引の中心になります。
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UCARWORLD BIZ
まとめ:変化したスリランカ市場を、どう攻めるか
5年ぶりに開いたスリランカ市場には、確かに大きな可能性があります。右ハンドルで、日本車のブランド力が強く、需要は最初から存在している。条件は悪くありません。
一方で、動いているルールは以前と別物です。「製造から3年以内」という年式の壁、関税に上乗せされるサーチャージやSSCLを含む重い課税、経済状況に左右される決済リスク、そして予告なく変わる政策。この4つを常に前提に置いてください。
やることは3つに絞れます。第一に、製造年月まで確認して仕入れる。第二に、現地の着地価格から逆算して値付けする。第三に、規制情報を継続して取れる状態を作る。この3つを回せる会社が、この市場で残ります。
UCARWORLDが選ばれる理由
スリランカのような市場は、うまくハマれば強い。ただ、一国に賭けきると規制が動いた瞬間に在庫が固まります。「年式規制に合わない玉はどこへ出すのか」「規制が締まったとき次はどの国か」。ここまで用意できて、初めて輸出は事業になります。

私はトレードカービュー(現TCV)の立ち上げに関わり、その後は自分でも中古車輸出会社(カーペイディーエム)を創業して、豊田通商グループへのM&Aまで経験しました。国ごとの規制で仕入れが止まる感覚も、政策変更で相場がひっくり返る場面も、机の上ではなく現場で見てきました。これまで1,000社以上の輸出支援に関わってきたなかでも、詰まる場所はいつも同じです。販路が一本しかないこと。
UCARWORLDは、世界100か国以上に届くグローバル中古車マーケットプレイスです。SEO・Web集客に強く、海外のバイヤーが検索して見つけてくれる状態を作れます。ですから、スリランカの年式条件に合わない車両でも、別の国で買い手が見つかる可能性が残ります。長期在庫の出口づくりが得意なのは、この構造があるからです。
商用車・トラック・建機にも対応しています。乗用車の年式規制が厳しい国でも、カテゴリーが変われば話が変わる。海外販売が初めての販売店でも進められるよう、加盟いただいた会社には出品や商談の進め方までサポートします。「まず自社の在庫が世界でどう見えるのか知りたい」という段階でも構いません。気軽に声をかけてください。
経歴
- カービューにて中古車輸出プラットフォーム「Tradecarview(現TCV)」を立ち上げ
- 中古車輸出未経験企業を含め、1,000社以上の輸出支援を実施
- 楽天グループにて海外EC展開・越境販売を推進
- 中古車輸出企業「カーペイディーエム」を創業し、豊田通商へ事業売却(M&A)
- 中古車輸出プラットフォームの立ち上げ・海外展開・M&Aを経験
- 現在はUCARWORLD(中古車輸出モール)の運営に携わり、出店企業様のモール上での販売をサポート