中古車輸出ビジネスにおいて、海外の購入者との取引では代金回収のリスクが伴います。
このリスクを低減し、安全な取引を実現する決済方法の一つがL/C(信用状)です。L/Cは国際取引で広く利用されており、輸出事業者にとって重要な知識といえます。
特に初めて海外バイヤーと取引する中古車販売店にとって、L/Cの理解不足は数百万円単位の代金未回収につながるリスクがあります。
「信頼できそうな相手だから」という感覚だけで取引を進め、後から代金が振り込まれないというトラブルは、輸出現場では珍しくありません。
この記事では、中古車輸出におけるL/Cの基本的な仕組みから、具体的な取引の流れ、利用する上でのメリット・デメリット、そして失敗しないための重要な注意点までを網羅的に解説します。
L/Cの理解を深める前に、輸出ビジネス全体の手続きの流れを把握しておくとスムーズです。
→ 中古車輸出 法人の始め方|5ステップで解説
中古車輸出におけるL/C(信用状)とは?代金回収を確実にする仕組み
中古車輸出におけるL/C(信用状)とは、Letter of Creditの略称で、輸入者の取引銀行が輸出者に対して代金の支払いを保証する約束状を指します。
この仕組みを利用することで、輸出者は、輸入者の支払い能力や意思に関わらず、L/Cに記載された条件を満たす船積み書類を銀行に提出すれば、銀行から確実に代金を回収できます。
これにより、海外の未知の取引相手との決済でも、代金未回収リスクを大幅に軽減することが可能です。
中古車輸出における決済方法の選び方は、取引先の国・金額・信頼関係によって大きく変わります。L/Cの仕組みを理解する前提として、輸出全体の流れも把握しておくと実務に役立ちます。
▶ 関連記事:中古車輸出の始め方・基礎知識まとめ|輸出ビジネスを成功させるポイント
L/Cが貿易取引で果たす銀行の保証という役割
L/C取引における銀行の役割は、輸入者の信用力に代わって、その支払いを保証することにあります。
具体的には、輸入者の依頼を受けた銀行(発行銀行)が、L/Cで定められた条件通りの書類(船荷証券など)が提示されることを条件に、輸出者への支払いを確約します。
輸出者は、船積み後にこれらの書類を自身の取引銀行(買取銀行)に持ち込むことで、代金を受け取れます。
このように、取引の間に銀行が入ることで、輸出者は輸入者の倒産や支払い拒否といったリスクから保護され、安心して商品を輸出できるのです。
銀行が支払保証を行うのは、あくまで「書類がL/Cの条件と完全に一致している場合」に限られます。
書類に1か所でも不備があれば、たとえ車両がすでに輸出済みであっても、銀行は支払いを拒否できます。
この点が、L/C取引で最も誤解されやすいポイントです。
中古車輸出でL/C決済が必須となる国やケース
中古車輸出において、L/C決済は常に任意で選択されるわけではありません。
スリランカやバングラデシュなど一部の国では、外貨管理や輸入規制の観点から、政府が中古車の輸入決済をL/Cに限定しています。
これらの国へ輸出する場合、L/Cの利用は必須条件となります。
たとえば、スリランカでは中古車輸入に際してL/C決済が政府によって義務付けられており、これを知らずにT/T送金で契約を進めると、通関時に書類不備として扱われ、車両が長期間港で留め置かれるケースがあります。
現場では「なぜか通関が通らない」と悩んだ後に発覚するパターンが多く、初心者が陥りやすい典型的な失敗例です。
また、法的な義務がない国との取引であっても、初めて取引する相手で信用調査が難しい場合や、取引金額が高額になるケースでは、輸出者側が自衛のためにL/C決済を取引条件として提案することがあります。
これは、代金回収リスクを回避するための有効な手段です。
国別の輸入規制・決済条件については、JETRO(日本貿易振興機構)の国・地域別情報も参考になります。
輸出前に必ず当該国のルールを確認することを推奨します。
中古車輸出におけるL/C決済の具体的な流れを5ステップで解説

L/C決済は、輸出者、輸入者、そして双方の銀行が関与する形で進められます。
一見複雑に見えますが、書類とお金の流れを順に追うことで理解しやすくなります。
契約締結後、まず輸入者が自国の銀行にL/C発行を依頼することから取引はスタートします。
以下、L/Cが開設されてから輸出者が代金を受け取り、輸入者が車両を引き取るまでの流れを5つのステップに分けて具体的に解説します。
ステップ1:輸入者が銀行にL/Cの発行を依頼する
まず、輸出者と輸入者の間で売買契約が成立した後、輸入者が自身の取引銀行へ行き、L/Cの発行を依頼します。
この際、売買契約書に基づいて、輸出者の会社名や住所、取引金額、通貨、船積みする車両の詳細、船積みの最終期限、L/Cの有効期限、そして代金支払いと引き換えに提出が必要な書類の種類といった詳細な条件を銀行に伝えます。
銀行は輸入者の与信審査を行い、問題がなければL/Cを発行します。
このステップで重要なのは、L/C発行前に輸出者・輸入者間で書類条件を細かく合意しておくことです。
L/C開設後に条件を変更する「アメンドメント」は追加費用と時間がかかるため、事前のすり合わせが後のトラブル防止につながります。
ステップ2:輸出者にL/Cの開設が通知される
輸入国の発行銀行でL/Cが開設されると、その情報は輸出国の銀行(通知銀行)へ電信で送られます。
通知銀行は、L/Cが正規のものであることを確認した上で、輸出者(受益者)に対してL/Cが開設されたことを通知します。
輸出者は受け取ったL/Cの原文(L/C advice)の内容を細かく確認し、売買契約の内容と相違がないか、記載された条件(特に書類や期限)をすべて満たすことが可能かを厳密にチェックします。
もし履行不可能な条件があれば、この段階で輸入者を通じて修正(アメンドメント)を依頼する必要があります。
実際の現場では、L/C adviceを受け取ってから「船積み期限まで1週間しかない」「要求書類に輸入国のみ発行できる書類が含まれている」といった問題が発覚するケースが少なくありません。
車両の在庫状況や港のスケジュールを確認した上で、実行可能な条件かどうか必ずこの段階で精査してください。
ステップ3:輸出者が車両を船積みし船荷証券(B/L)を入手する
L/Cの内容に問題がないことを確認した後、輸出者はL/Cに定められた船積み期限内に車両を港に運び、船会社に引き渡して輸出通関と船積みの手続きを進めます。
船会社は車両を本船に積み込むと、その証明として船荷証券(Bill of Lading、B/L)を発行します。
このB/Lは、貨物の所有権を示す有価証券であり、L/C決済において最も重要な書類の一つです。
輸出者はこのB/Lと、L/Cで要求されている他の書類(インボイス、保険証券など)の準備を進めます。
輸出通関に関しては、税関への輸出申告が必要です。中古車の場合は車台番号・年式・車種など詳細な申告が求められます。
財務省税関のガイドラインも併せて確認することをお勧めします。
ステップ4:輸出者が銀行に必要書類を提出して代金を受け取る
船積みを完了し、L/Cで要求されているすべての書類が揃ったら、輸出者は自身の取引銀行(買取銀行)にそれらの書類一式を提出し、代金の支払いを依頼します。
この手続きを「買取(ネゴシエーション)」と呼びます。
銀行は、提出された書類がL/Cの条件と一字一句違わずに完全に一致しているかを審査します。
書類に不備(ディスクレ)がなければ、銀行は輸出者に代金を支払います。
この時点で輸出者は代金回収を完了し、取引における役割を終えます。
「一字一句」という表現は誇張ではありません。
実際に、会社名の表記でピリオドの有無・スペースの位置がL/Cと異なるだけで、銀行が書類審査をはじいたケースがあります。
ベテランの実務担当者でも確認漏れが起きやすい工程です。
ステップ5:輸入者が銀行に代金を支払い書類を受け取り車両を引き取る
輸出者に代金を支払った買取銀行は、書類一式を発行銀行へ送付して代金の返済を求めます。
書類を受け取った発行銀行は、輸入者に対して書類の到着を通知します。
輸入者は、発行銀行に商品代金を支払うことで、船荷証券(B/L)をはじめとする船積書類一式を受け取ることができます。
その後、輸入者は港に到着した車両を船会社から引き取るために、この船荷証券(B/L)を船会社に提示します。
これにより、すべての取引が完了します。
B/Lは「貨物の権利証」であるため、輸入者が代金を支払うまでは輸出者側が書類を保持していることになります。
つまり、代金の未払いが起きた場合、輸入者は車両を引き取ることができません。
これがL/C決済の安全性の核心です。
輸出者がL/C決済を利用するメリット
輸出者がL/C決済を利用する最大の動機は、取引の安全性を確保することにあります。
特に中古車のような高額商品を取り扱うビジネスでは、代金の未回収は大きな損害につながりかねません。
L/Cは、この不安を解消する強力な手段となるだけでなく、資金繰りを円滑にする効果も期待できます。
ここでは、輸出者にとってのL/C決済の主なメリットを2つの側面から解説します。
銀行が支払いを保証するため代金未回収のリスクをなくせる
L/C決済を利用する最大のメリットは、代金回収の確実性が格段に高まる点です。
輸出者がL/Cに記載された条件をすべて満たした書類を期日内に銀行へ提示すれば、たとえ輸入者が支払いを拒否したり、倒産したりした場合でも、発行銀行が支払いを保証してくれます。
これにより、輸出者は取引相手の信用力や輸入国の政治・経済情勢(カントリーリスク)に左右されることなく、安心して商品を輸出できます。
特に新規の取引先や信用情報が乏しい国のバイヤーとの取引において、この保証は極めて重要です。
国内では評価が低い在庫車両でも、海外では需要が高いケースは多くあります。
しかし輸出先が新規の取引先であれば、代金回収リスクを理由に販路が広げられないということにもなりかねません。
L/Cを活用することで、初めてのバイヤーとの取引にも安心して踏み出せるようになります。
L/Cを担保に輸出前の融資(パッキングクレジット)を受けられる場合がある
L/Cは代金回収の保証だけでなく、資金調達の手段としても活用できます。
輸出者が輸入者から受け取った信用状を担保として、取引銀行から融資を受ける制度があり、これを「輸出前金融」または「パッキングクレジット」と呼びます。
この融資を利用することで、輸出者は車両の仕入れ費用や輸送・梱包にかかる経費を、代金を受け取る前に調達することが可能になります。
自己資金に余裕がない場合でも、大きな規模の取引に対応しやすくなるため、ビジネスチャンスの拡大に繋がります。
パッキングクレジットの利用可否や条件は取引銀行によって異なります。
輸出規模を拡大したい段階で一度、メインバンクに相談してみることをお勧めします。
輸出者が知っておくべきL/C決済のデメリット
L/C決済は代金回収の安全性を高める一方で、輸出者にとっていくつかの負担も伴います。
これらのデメリットを理解せずに利用すると、予期せぬコスト増やトラブルに見舞われる可能性があります。
主に、金銭的なコストと手続き上の煩雑さが挙げられます。
ここでは、L/C決済を検討する際に必ず知っておくべき2つのデメリットについて具体的に説明します。
T/T送金に比べて銀行手数料が高くなる
L/C決済のデメリットとしてまず挙げられるのが、コストの増加です。
L/C取引では、発行銀行、通知銀行、買取銀行といった複数の銀行が関与するため、それぞれの段階で手数料が発生します。
具体的には、L/C発行手数料、通知手数料、買取手数料、書類送付料などがかかり、これらの合計額は、手続きがシンプルなT/T(電信送金)に比べて高額になります。
どちらがどの手数料を負担するかは契約時の交渉によりますが、輸出者側が一部を負担することも多く、利益を圧迫する要因になり得ます。
取引1件あたりの手数料は数万円〜十数万円規模になることがあり、利益率が薄い低価格帯の車両ではL/C決済自体がコスト割れになるケースもあります。
どの価格帯・取引規模からL/Cを使うべきか、事前に損益シミュレーションをしておくことが実務上の鉄則です。
書類作成の手続きが複雑で時間がかかる
もう一つの大きなデメリットは、手続きの煩雑さです。
L/C取引では、代金支払いを受けるための条件として、船荷証券(B/L)やインボイスなど、複数の書類提出が求められます。
これらの書類は、L/Cに記載された内容と一字一句違わずに正確に作成しなければなりません。
スペルミスや日付の矛盾といった些細な間違いも支払い拒否の理由となるため、書類の作成と確認には細心の注意と多くの時間が必要です。
特に貿易実務に不慣れな場合、この書類作成が大きな負担となります。
初心者が陥りやすいのが、「インボイスとB/Lで商品の記載が微妙に異なる」という見落としです。
たとえばインボイスに「TOYOTA LAND CRUISER」、B/Lに「LAND CRUISER TOYOTA」と記載順が逆になっているだけでもディスクレとなります。
初回のL/C取引は、フォワーダーや通関業者のサポートを受けながら進めることを強くお勧めします。
中古車輸出のL/C取引で失敗しないための重要ポイント
L/C取引を成功させるためには、その仕組みを理解するだけでなく、実務上の重要なポイントを押さえておく必要があります。
特に、支払い拒否の最大の原因となる「ディスクレ」の防止は最優先事項です。
また、どのような書類が必要になるのかを事前に把握し、L/Cの種類や記載されている各種期限の意味を正しく理解することも不可欠です。
これらのポイントを遵守することで、L/C取引に伴うリスクを最小限に抑え、スムーズな代金回収を実現できます。
最も重要な注意点!ディスクレ(書類の不一致)を防ぐ方法
L/C取引で最も避けなければならないのが、ディスクレ(ディスクレパンシー)です。
これは提出した書類とL/Cの条件が一致しない状態を指し、銀行が支払いを拒否する正当な理由となります。
例えば、会社名のスペルミス、商品名や数量の相違、日付の矛盾など、些細な間違いもディスクレと見なされます。
これを防ぐには、まずL/Cを受け取った時点で内容を精査し、実行不可能な条件がないか確認することが重要です。
そして、書類作成時にはL/Cの記載内容を正として、複数人で何度もチェックする体制を整えることが有効な対策です。
ディスクレ発生率を下げるための実務的な工夫として、「L/C条件チェックシート」を社内で標準化することが有効です。
インボイス・B/L・保険証券の各書類に対して、L/Cの記載事項と1行ずつ照合するフローを作るだけで、見落としが大幅に減ります。
L/C取引では、車両そのものよりも「書類の正確さ」が代金回収を左右する場面があります。実務では、営業担当だけでなく、書類担当・銀行・フォワーダーを含めた確認体制が重要です。
茶谷’s POINT
スリランカやバングラデシュ向けの中古車輸出では、L/C取引になるケースがあります。私自身、L/C条件とインボイスやB/Lの記載が一致せず、銀行でディスクレとなった経験は何度もあります。特に多いのは、車台番号、車種名、Consignee、Notify Party、船積期限、必要書類の不一致です。L/Cは安全性の高い決済方法ですが、書類条件が合わなければ支払いが止まることがあります。受け取ったら、船積み前に原文と各書類を必ず照合してください。

L/C取引で必要となる主な書類一覧(B/L、インボイス等)
L/C取引で要求される書類は、契約内容によって異なりますが、一般的に以下のものが中心となります。
第一に、貨物の所有権を示す「船荷証券(B/L)」。
第二に、商品の明細と金額を記載した「商業送り状(インボイス)」。
第三に、輸送中の事故に備える「保険証券(Insurance Policy)」。
中古車輸出の特性上、これらに加えて、輸入国の規制に応じた「輸出検査証明書(Inspection Certificate)」や「輸出抹消仮登録証明書」などが要求される場合も多くあります。
L/Cに記載された必要書類を正確に把握し、漏れなく準備することが不可欠です。
輸出抹消仮登録証明書は、国土交通省を通じた手続きが必要です。
発行までに数日かかることがあるため、船積み期限から逆算して余裕を持ったスケジュールを組む必要があります。
取得タイミングを誤ると、船積み期限に間に合わずL/Cが失効するリスクがあります。
なお、必要書類は輸出先の国によって異なります。国別の規制・条件は下記記事で詳しく解説しています。
→ 国別 中古車輸出 規制一覧【2026年最新】
L/Cの種類は取消不能信用状(Irrevocable L/C)が基本
L/Cにはいくつかの種類がありますが、現在の貿易取引で利用されるのは、原則として「取消不能信用状(Irrevocable L/C)」です。
これは、一度発行されると、L/Cに関わる当事者(輸出者、輸入者、発行銀行、確認銀行など)全員の同意がなければ、内容の変更や取消ができないタイプの信用状です。
輸出者にとっては、輸入者やその銀行が一方的に取引をキャンセルすることができないため、支払いの保証がより確実になります。
契約時には、必ず「Irrevocable」の文言がL/Cに含まれているかを確認することが重要です。
取消可能信用状(Revocable L/C)は現在ほぼ使われていませんが、稀に不慣れなバイヤーから提示されることがあります。
Irrevocableの明記がない場合は必ず確認し、取消可能な条件では受け取らないようにしましょう。
信用状に記載された船積み期限や有効期限を厳守する
L/Cには、取引を履行するための重要な期限が2つ設定されています。
一つは「船積期限(Latest Shipping Date)」で、商品を船積みしなければならない最終日を指します。
もう一つは「有効期限(Expiry Date)」で、代金回収のために銀行へ書類を提示しなければならない最終日です。
これらの期限は厳格であり、1日でも過ぎてしまうとL/Cは効力を失い、銀行は書類の買い取りを拒否します。
船会社のスケジュールや書類準備にかかる時間を考慮し、余裕を持った計画を立てて、必ず期限内にすべての手続きを完了させることが極めて重要です。
連休・年末年始・台風など、日本とバイヤー国の双方で発生し得る予期せぬ遅延要因を考慮したうえで、船積み期限の2週間前には必要書類の準備を開始するスケジュールが現場の目安です。
「間に合うと思っていたのに間に合わなかった」という失敗が最も多いのが、この期限管理です。
L/C以外の決済方法と特徴を比較
中古車輸出の決済方法はL/Cだけではありません。
取引相手との信頼関係や取引条件に応じて、他の決済方法が選択されることもあります。
代表的なものに、T/T(電信送金)やD/P・D/A(手形決済)があります。
L/Cのメリット・デメリットをより深く理解するためには、これらの決済方法が持つリスクや手続きの違いと比較することが有効です。
それぞれの特徴を知り、状況に応じて最適な方法を選択することが、安全で効率的な貿易実務につながります。
決済方法の選択ミスは、代金未回収などの深刻なトラブルに直結します。
実際の失敗事例も参考にしてください。
→ 中古車輸出で実際にあった失敗事例|致命的トラブルを回避
T/T(電信送金):最も一般的だが前払いが基本
T/T(Telegraphic Transfer)は、銀行間の電信を利用した送金方法で、手続きが簡単かつ手数料が比較的安いことから、貿易決済で最も広く利用されています。
しかし、T/Tには銀行の支払保証がないため、輸出者にとっては代金未回収のリスクが伴います。
そのため、中古車輸出のような取引では、船積みの前に代金の全額または一部(デポジット)を前払いしてもらうのが一般的です。
相手との信頼関係が構築されている場合や、少額の取引でよく用いられる方法です。
実際の中古車輸出では、T/Tの「30%前払い+残70%は船積み後B/L受領前払い」という条件が多く見られます。
一方で、長期取引のある信頼性の高いバイヤーには後払い条件に移行していくケースもあります。
条件設定は取引履歴・金額・国のカントリーリスクを総合して判断しましょう。
D/P・D/A(手形決済):L/Cより手続きは簡単だがリスクが残る
DP(Documents against Payment)とDA(Documents against Acceptance)は、輸出者が振り出す「荷為替手形」を利用した決済方法です。
LCと同様に銀行を経由しますが、銀行による支払保証はありません。
DPは、輸入者が銀行で代金を支払うこと(Payment)を条件に船積書類が渡される「支払渡し」のため、比較的安全性が高いです。
一方、DAは、輸入者が手形の期日通りの支払いを約束する「引受(Acceptance)」をした時点で書類が渡されるため、期日までに輸入者が倒産した場合、輸出者は代金を回収できないリスクが残ります。
D/A条件での取引は、バイヤーに対して実質的な信用販売に近い状態になります。
輸出初心者や新規バイヤーとの取引でD/A条件を求められた場合は、まずL/CまたはD/P条件から始めることを強くお勧めします。
中古車輸出のL/Cに関するよくある質問
ここでは、中古車輸出のL/C取引に関して、実務担当者が抱きやすい疑問について回答します。
手数料の負担者、書類不備(ディスクレ)発生時の対処法、代金受け取りまでの期間など、具体的な内容を取り上げます。
L/Cの発行手数料は誰がどのくらい負担するのですか?
L/Cの発行手数料は、原則としてL/Cの発行を依頼する輸入者(買主)が負担します。
金額は取引額や銀行によって変動しますが、数万円程度が一般的です。
ただし、L/C取引には通知手数料や買取手数料など他の費用も発生し、これらをどちらが負担するかは、売買契約時の交渉によって決定されます。
輸出者が負担する「買取手数料」は、取引金額の0.1〜0.3%程度になることが多いです。
1台100万円の取引で1,000〜3,000円の計算ですが、複数台同時の場合や高額車両の場合は無視できないコストになります。
もし書類に不備(ディスクレ)があったら代金は受け取れないのですか?
原則として銀行は支払いを拒否しますが、直ちに代金を受け取れなくなるわけではありません。
ディスクレが発生した場合、輸出者はまず輸入者に連絡し、書類の不備を承知の上で代金を支払う意思があるか確認します。
輸入者の同意が得られれば、銀行を通じて支払いを受けることが可能です。
ただし、ディスクレを輸入者に通知する際に輸入者が「条件が違う」という理由で支払いを拒否するリスクがゼロではありません。
市場価格が下落している場合や、輸入者が取引をキャンセルしたい事情がある場合、ディスクレを口実にされることもあります。
これがディスクレを最初から出してはいけない最大の理由です。
L/Cが開設されてから代金を受け取るまで、どのくらいの期間がかかりますか?
船積みを行い、必要書類を銀行に提出してから代金を受け取るまでの期間は、通常1〜2週間程度です。
ただし、これは書類に不備がない場合の目安です。
書類の準備にかかる時間、銀行の審査日数、関係国間の距離などによって変動します。
ディスクレが発生した場合は、さらに日数を要することになります。
在庫回転率の観点から見ると、L/C取引は代金回収まで通常より1〜3週間多くかかることを前提に資金計画を立てる必要があります。
複数取引を並行させる場合は、入金タイミングのズレが資金繰りに影響することがあるため、月次の資金フロー管理が重要です。
まとめ
中古車輸出におけるL/C(信用状)は、銀行の支払保証を介すことで、輸出者の代金未回収リスクを大幅に軽減する有効な決済手段です。
スリランカやバングラデシュのようにL/C決済が義務付けられている国もあり、該当地域へ輸出する事業者にとっては必須の知識となります。
手続きが複雑で銀行手数料も発生しますが、取引の流れやディスクレなどの注意点を正しく理解し、期限を遵守すれば、安全な海外取引の実現が可能です。
他の決済方法であるT/T送金やD/P・D/A決済との違いも把握し、取引相手や状況に応じて最適な方法を選択することが求められます。
初めてL/C取引を経験する際は、単独で全工程をこなそうとせず、通関業者・フォワーダー・貿易実務に詳しい仲介者を活用することが現実的です。
一度の失敗で失う金額と時間を考えると、専門家へのコスト投資は十分に元が取れます。
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中古車輸出において、L/Cのような決済知識を身につけることは重要ですが、それ以前に「信頼できる海外バイヤーとつながること」がビジネスの前提です。
UCARWORLDは、日本の中古車販売店が世界100か国以上のバイヤーへ直接アクセスできるグローバルマーケットプレイスです。
代表の茶谷信明は、TCV(旧トレードカービュー)の立ち上げ関与、1,000社以上への輸出コンサルティング、楽天での越境EC経験、カーペイディーエム創業・豊田通商グループへのM&Aという実績を持つ、現場叩き上げの実務家です。
「初めての輸出で何から始めればいいかわからない」「長期在庫になってしまった車両の出口を探している」「L/Cに対応できる海外バイヤーとつながりたい」――
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同じ車種でも輸出先によって数十万円単位で価格差が出るケースもあり、国内だけでの販売判断がいかに機会損失を生んでいるかを実感するオーナーも少なくありません。
L/Cの手続きに不安がある方も、海外販路をどこから始めればいいか迷っている方も、まずはUCARWORLDへお気軽にご相談ください。

経歴
カービューにて中古車輸出プラットフォーム「Tradecarview(現TCV)」を立ち上げ
中古車輸出未経験企業を含め、1,000社以上の輸出支援を実施
楽天グループにて海外EC展開・越境販売を推進
中古車輸出企業「カーペイディーエム」を創業し、豊田通商へ事業売却(M&A)
中古車輸出プラットフォームの立ち上げ・海外展開・M&A実績を持つ。
これまで1,000社以上の中古車輸出を支援。