これから中古車輸出ビジネスに参入する人に向けて、個人事業主から法人化する場合や新規設立時の事業開始までの段取りを5つのステップで解説します。
各種手続きの全体像を把握し、安定した利益を生み出すためのロードマップとして活用してください。
必須となるライセンス取得から販売ルートの開拓まで、具体的な実務フローをまとめています。
中古車輸出ビジネスを始める前に知っておきたい基礎知識
事業を本格的にスタートする前に、業界の基本構造を理解しておきます。
日本の中古車がなぜ海外で求められているのか、そしてどのようにして利益を確保していくのかという仕組みを知る段階です。
ビジネスモデルの根幹を把握することで、その後の手続きや戦略立案がスムーズに進むようになります。
海外で日本の中古車が人気を集める理由とは
日本国内で使用された車両は、定期的な車検制度や良好な道路環境により、海外の同年代の車両と比較して状態が良いケースが多く見受けられます。
エンジンや足回りの耐久性に対する信頼が厚く、数十万キロ走行した車でも十分に実用できると評価されています。
左側通行の国だけでなく、右側通行の国でも需要が存在する地域は少なくありません。
海外に旅行に行った際に日本車を見たことある方も多いと思います。
このような品質の高さから新興国を中心に継続的な需要を確保でき、販売網を開拓することで手堅く利益を出せるビジネスモデルを確立できます。
輸出ビジネスの大きなメリット!消費税の還付を受けられる仕組み
国内で中古車を仕入れる際、車両本体価格に加えて消費税を支払うことになります。
しかし、商品を海外へ輸出する場合、海外の消費者に日本の消費税を負担させることはできないため、輸出免税という制度が適用されます。
一定の条件を満たして税務署へ申告することで、仕入れ時に支払った消費税分が還付される仕組みです。
この還付金は事業を運営する上で非常に大きな利益源となり、資金繰りを安定させる効果を持っています。
【ステップ1】事業の基盤を固める!法人設立と事務所の準備
中古車輸出を始めるにあたり、まずはビジネスの土台となる法人組織と活動拠点を整備します。
個人事業主としてスタートする選択肢もありますが、海外取引や許認可の面で法人格を持つメリットは非常に大きいです。
ここでは会社形態の選択と事務所契約に関する基本事項を説明します。
株式会社か合同会社か?事業規模に合わせた法人形態の選び方
法人を設立する際、主に株式会社と合同会社の2つの形態から選択します。
株式会社は社会的信用度が高く、将来的な資金調達や人材採用を視野に入れている場合に適しています。
一方、合同会社は設立費用が安く抑えられ、手続きも比較的シンプルである点が特徴です。
個人から法人成りしてスモールビジネスとして始める場合、初期費用を抑える目的で合同会社を選ぶケースも増えています。
自身の事業計画や確保できる予算に合わせて適切な形態を決定します。
古物商許可の要件を満たす営業所の契約と準備
中古車の仕入れに必要な古物商許可を取得するには、実体のある営業所を用意しなければなりません。
法人登記の住所とは別に、実際に業務を行い、帳簿などを保管できるスペースが求められます。
自宅を営業所として申請することも可能ですが、賃貸物件の場合は貸主からの使用承諾書が必要になるケースがあります。
また、バーチャルオフィスなどの実体を伴わない空間は営業所として認められないため、個人で始める場合でも要件を満たす物件を確実に契約しておく必要があります。以前私が担当した会社さんは、小さい事務所と、乙仲(フォワーダー)などの保管ヤードの写真で、古物を取得した会社もありましたので、不安がある場合は、事前に管轄の警察署と相談しておきましょう。
【ステップ2】中古車ビジネスに不可欠な許可とコードを取得する
事業の拠点が決まったら、次に法的・事務的な必須手続きを進めます。
中古車を扱うためのライセンスや、税関申告に使う識別番号の取得が対象です。
手続きが複雑で時間を要する場合は、専門のコンサルタントや行政書士に依頼して効率化を図る手法も検討肢に入ります。行政書士を選ぶ際は、中古車輸出業界に知見のある方を選ぶとよいでしょう。
中古車の仕入れに必須!古物商許可の申請手続きと注意点
事業として中古車を買い取るために、管轄の警察署へ古物商許可の申請を行います。
申請には法人の登記簿謄本や役員の住民票など、複数の公的書類を揃える必要があります。
書類提出から許可が下りるまで概ね40日程度かかるため、事業開始のスケジュールから逆算して早めに動き出すことが不可欠です。
書類作成や警察署とのやり取りに不安がある場合は、専門のコンサルタントや行政書士に手続きの代行を依頼することで、スムーズに許可証を取得できます。
税関手続きをスムーズに進めるための輸出入者コード(JASTPROコードなど)登録
車両を海外へ輸出する際、税関への申告を円滑に行うために輸出入者符号を取得しておきます。
このコードを持っていなくても輸出自体は可能ですが、取得しておくことで通関業者とのやり取りや税関の審査手続きが大幅に簡略化されます。
日本輸出入者標準コードセンターのWebサイトから法人情報などを入力して申請を行い、登録を完了させます。
取得業務に手間をかけたくない場合、輸出実務に詳しいコンサルタントにサポートを依頼するのも一つの方法です。
【ステップ3】海外バイヤーにアピール!販売チャネルを構築する
仕入れの準備と並行して、海外の顧客へ車両を販売するためのルートを確立します。
どのような媒体を使って自社の商品をアピールするかが、売り上げを大きく左右します。
長期的な利益の最大化を目指し、自社の予算やリソースに合わせた販売網を構築していく段階です。
自社で集客!多言語対応の海外向け販売サイトを立ち上げる
独自のドメインを取得し、海外顧客に向けた自社専用のECサイトを制作するアプローチです。
英語やフランス語、ポルトガル語などをはじめとする多言語対応や、海外からの問い合わせを受け付けるシステムの導入が必要になります。
初期の構築費用やSEO対策などの集客コストはかかりますが、他社のプラットフォームに依存しないため、販売手数料が発生しません。
軌道に乗れば高い利益率を維持できるため、中長期的な視点でブランド力を育てていきたい企業に適した販売チャネルです。
すぐに販売開始!海外向け中古車ECプラットフォームへの出店
自社サイトの構築に時間をかけられない場合、既存の海外向け中古車販売プラットフォームに出店する手法があります。
すでに世界中のバイヤーが集まるサイトを利用するため、登録直後から商品を見てもらえる機会が多く、早期の販売実績に結びつきやすいのが特徴です。
システム利用料や成約時の手数料はかかりますが、集客の手間を省きつつスピーディに利益を出すことが可能です。
サイトごとに得意とする国や地域が異なるため、ターゲットに合ったプラットフォームを選択します。
【ステップ4】良質な中古車を確保する!仕入れルートを開拓する
販売の目処が立った後は、海外の需要に応じた車両を適正価格で仕入れるルートを確保します。
国内に豊富に存在する中古車の中から、いかに条件の良い個体を見つけ出すかが問われる場面です。
安定した仕入れ網の構築は、事業の利益を左右する最も重要な要素の一つと言えます。
安定した仕入れの要!オートオークションに入会する手順
全国各地で開催される業者間オートオークションは、中古車輸出の主たる仕入れ先となります。
入会するには、古物商許可を取得してから一定期間が経過していることや、紹介者の存在など、各会場が定める厳しい審査基準をクリアしなければなりません。
個人に比べて法人の方が入りやすいとは思いますが、例えば、設立間もない法人が単独で入会するのはハードルが高いケースもあるため、オークション代行業者を利用して間接的に仕入れる方法から始めることも一般的です。
審査対策については、業界に精通したコンサルタントの知見を借りる手法も有効です。
在庫リスクを軽減できる無在庫販売モデルの仕組み
車両を先に買い取ってから買い手を探すのではなく、海外のバイヤーから注文と入金を受けてからオークションで仕入れる無在庫販売モデルが存在します。
この手法を採用することで、売れ残った車両の維持費や相場下落による損失リスクを極限まで抑えることができます。
手元に多額の自己資金がなくてもビジネスを回しやすく、堅実に利益を積み上げられる点が強みです。
まずは代行業者が提供する車両データを活用し、自社の販売サイトに掲載する形からスタートする業者が多く見られます。
【ステップ5】車両を安全に海外へ!輸出・物流体制を整備する
販売が決まった車両を、日本の港から海外の指定港まで安全かつ確実に届けるための物流網を整備します。
通関手続きや船積みの手配など、専門的な業務が多岐にわたる領域です。
輸出業務に不安がある場合は、専門のコンサルタントや代行業者と連携して体制を整えます。
煩雑な手続きを代行!信頼できる乙仲(通関業者)の選び方
輸出に必要な税関への申告や許可手続きは、乙仲と呼ばれる通関業者に委託するのが一般的です。
中古車の輸出に関する実績が豊富で、船会社との交渉力を持つ業者を選ぶことが、トラブルのない輸送を実現する鍵となります。
迅速な連絡体制が整っているか、イレギュラーな事態に柔軟に対応できるかを見極める必要があります。
車はRoRo船(貨物を積んだトラックやトレーラーをそのまま運べ、車両を自走で積むこともできる)と呼ばれる船で海外に運ぶことが多く、乙仲は、船会社とのブッキング、通関、港湾での積み下ろし、関連する書類作成を専門的に行います。
自社に最適な業者が分からない場合は、同業他社の評判を調べたり、輸出事業のコンサルタントから紹介を受けたりしてパートナーを選定します。
車両の保管から船積みまでを担うヤード(保税地域)の手配方法
オークション会場で仕入れた車両は、船に積み込むまでの間、港の近くにあるヤードへ運搬して保管します。
このヤード内で、輸出前の写真撮影やコンテナへのバンニング作業、必要に応じた輸出前検査などを実施します。
写真の角度や明るさが販売に直結するため、車両写真の撮影は販売の要となります。
港周辺には中古車輸出を専門に扱うヤード業者が多数存在しており、月額料金やサービス内容を比較して契約を結びます。
効率的な物流網を構築するため、通関業者の手配とセットでコンサルタントにヤードの確保を依頼する事業者も少なくありません。
以前私が担当したケースでは、仕入れから販売まで1年以上かかった車もあり、保管料は大きな問題となることがあるので、重要なポイントです。規模が大きくなった際には、港近くにヤードを直接借りるという選択肢も考えておきましょう。陸送会社と保管ヤードを提携をするのもとてもいいアイデアです。
中古車輸出ビジネスで失敗しないための重要ポイント
せっかく海外との取引ルートを開拓しても、各国のルールや市場の需要を見誤ると大きな損失を被る危険性があります。
利益を確実に残し、事業を安定させるために押さえておくべきリスク管理の要点について触れていきます。
専門のコンサルタントのアドバイスを仰ぐことも有効な手段です。
輸出先の国ごとに異なる輸入規制(年式・排ガス等)を必ず確認する
中古車を輸出する際、相手国の輸入規制に適合しているかの事前確認は絶対条件です。
製造から3年以内、あるいは5年以内の車両しか輸入を認めない国や、厳しい排ガス規制を設けている地域が存在します。
また、右ハンドル車の輸入を禁止している国に誤って車両を送ってしまうと、現地で荷降ろしができず返送費用が自社負担となる事態に陥ります。
輸出前検査(タンザニア・ザンビア向け輸出にはEAA検査が必要など)の義務の有無を含め、ターゲットとする国の最新の法規制を常に情報収集しておくことが不可欠です。
どの国に何が売れる?ターゲット国の人気車種トレンドを調査する方法
世界中で求められる車は一律ではなく、国や地域のインフラ事情によって売れ筋の車種が大きく異なります。
未舗装路が多いアフリカ諸国では耐久性の高いSUVやピックアップトラックが好まれ、東南アジアの一部では多人数乗車が可能なミニバンに需要が集中しています。
現地のポータルサイトを閲覧したり、実際に現地へ足を運んだりしてトレンドを把握することが重要です。
需要の高い商材を的な仕入れることで、高値での販売が実現し、結果として大きな利益を確保できます。
中古車輸出の法人設立に関するよくある質問
個人から法人への移行や、事業の立ち上げ期に抱えやすい疑問について回答します。
利益の見通しや必要なスキル、専門家のコンサルの要否など、多くの方がつまずきやすいポイントを整理しました。
Q. 中古車輸出事業を始めるには、どのくらいの初期費用がかかりますか?
最低でも300万円から500万円程度の資金が必要です。
法人設立費用のほか、オークション入会金、当面の運転資金などが含まれます。
利益が安定するまでの期間を考慮し、余裕を持った資金計画を立てておきます。
Q. 語学力(特に英語)はビジネスにどの程度必要ですか?
中学レベルの基礎的な英語力があれば十分に始められます。
バイヤーとのやり取りは定型的なメールやチャットが中心となるため、翻訳ツールを活用すれば個人でも対応可能です。
専門用語は実務の中で習得できます。
当社でも基礎的な英語力で営業・事務作業・お客様とのやりとりなどの対応をしているスタッフは何名もおりました。
Q. 個人事業主ではなく、法人として中古車輸出を始めるメリットは何ですか?
最大のメリットは社会的信用の向上です。
海外バイヤーとの取引やオークション入会審査において有利に働きます。
また、個人の場合よりも経費として計上できる範囲が広がり、利益に対する高い節税効果を得られます。
まとめ
中古車輸出は、適切な手続きを踏めば個人事業主からでも参入できるビジネスモデルです。
法人設立から始まり、販売網や物流体制を構築していくことで、事業開始から3年後には強固な収益基盤を持つ企業へと成長させることも十分に狙えます。
各国の規制や市場動向の把握には専門的な知識が求められる場面もあるため、適宜コンサルタントの支援も活用しながら、着実に利益を積み上げる体制を構築していく事業者が増えています。
また近年増えているのが、日本向けの車屋さんが海外に輸出するケースです。日本とは違う車種が売れたり、日本よりも高値で売れる車両もあるので、メリットが大きいです。ただし、今までの知見を活かせずに仕入れで失敗することも少なくないので注意をしましょう。
経歴
カービューにて中古車輸出プラットフォーム「Tradecarview(現TCV)」を立ち上げ
中古車輸出未経験企業を含め、1,000社以上の輸出支援を実施
楽天グループにて海外EC展開・越境販売を推進
中古車輸出企業「カーペイディーエム」を創業し、豊田通商へ事業売却(M&A)
中古車輸出プラットフォームの立ち上げ・海外展開・M&A実績を持つ。
これまで1,000社以上の中古車輸出を支援。