チリへの輸出を検討している方に、先に言っておきます。
「チリって中古車を輸入禁止にしてるのに、なんで日本の統計だと常に上位なの?」
この矛盾に気づいた方は、かなり鋭いです。実はそこに、南米最大の中継貿易ハブとしてのチリの本質が隠れています。
茶谷です。今回は、この構造を現場の実務目線でそのまま書きます。
日本の中古車輸出先としてチリが南米の巨大市場である理由
最初に見るべきポイントです
日本車はアジア・アフリカ・ヨーロッパと幅広く輸出されていますが、南米に絞るとチリが断トツのトップです。
なぜか。理由は3つあります。
- 円安による価格競争力の向上
- チリの安定した経済基盤
- 保税特区「イキケ」を介した中継貿易の仕組み
この3つが重なっているのはチリだけ。だから南米で突出した輸出先になっています。
円安が追い風になっている、これは今すぐ動くべき理由です
円安が続く局面では、海外バイヤーにとって日本車は「質が高いのに安く買える」状態になります。
たとえば1ドル140円台のとき、100万円の車は約7,143ドル。それが155円台になると約6,452ドルになる。同じ車が700ドル以上安くなる計算です。
これはバイヤー側から見ると「今が買い時」であり、在庫を積む理由になります。逆に円高局面では動きが鈍くなる。この為替サイクルをつかめるかどうかが、在庫回転率に直結します。
中継貿易の拠点としてのチリの地理的優位性
チリは太平洋に沿って細長く伸びる国で、南米大陸の西の玄関口です。
重要なのは、海を持たない内陸国・ボリビアとパラグアイが、太平洋へ出る際にチリの港を使うという点。これが中継貿易の構造を生み出しています。
日本 → チリ(イキケ港)→ ボリビア・パラグアイ・ペルー
このルートが成立しているから、「チリ向け輸出」と統計に出ても、実際にその車がチリ国内を走るとは限らない。この流れを理解していないと、現地バイヤーとの交渉でもずれが生じます。
チリの中古車輸出を理解する鍵「イキケ保税特区」の仕組み
ここがポイントです——チリ国内への輸入は原則禁止
「じゃあチリ人は中古車を買えないの?」と思いますよね。
チリは自国の自動車産業保護などを理由に、一般消費者が使用目的で中古車を輸入することを法律で禁止しています。
それなのに日本の輸出統計ではチリが常に上位に来る。この矛盾を解くのが「イキケ保税特区」です。
イキケからボリビア・パラグアイへ!ここで差が出ます
イキケ保税特区は、チリ北部に位置する関税が免除される特別経済区域です。
日本から船で届いた中古車は、このイキケに陸揚げされます。チリ国内の関税はかかりません。そしてその多くは、ボリビア・パラグアイ・ペルー南部へ再輸出されていきます。
港を持てない内陸国にとって、イキケは「海への出口」です。アジアでいえばネパールやモンゴル向け貿易のハブ港に近い役割。アフリカならモーリシャス経由のルートと似た構造です。
茶谷’s POINT: 初めてチリ向け輸出を検討する方の多くが「チリ国内で売るための輸出」と勘違いして商談に入ってしまいます。実際のエンドユーザーはボリビアやパラグアイにいることが多い。だから「チリのバイヤーが何を求めているか」ではなく、「その先の国のエンドユーザーが何を求めているか」を把握しないと、仕入れ車種を間違えます。これ、最初につまずく人が本当に多いポイントです。

南米の過酷な環境で日本車が圧倒的なシェアを誇る背景

「壊れにくい」という信頼性、甘く見ないでください
南米で日本車が選ばれる一番の理由は「壊れにくい」という一点です。
アンデス山脈の高地、アタカマ砂漠の極乾燥地帯、ボリビアの未舗装山道。日本のディーラーが想定している環境とはまったく違います。
こういった過酷な環境でメンテナンスもままならないとき、壊れにくい車は命綱です。「安いから中国車にしよう」と思っても、修理できない場所で止まったら取り返しがつかない。このリアルな経験が、現地ユーザーを日本車に向かわせています。
悪路に強いSUVやピックアップトラックが人気——仕入れのポイントはここです
現地で人気が高い車種は明確です。
- トヨタ ハイラックス:南米全域で圧倒的な知名度。農業・建設・商用で引っ張りだこ
- トヨタ ランドクルーザー:高値でも売れる。耐久性への信頼が絶大
- スバル フォレスター:山岳地帯での走破性を評価されている
ただし、色の好みも国によって違います。チリやボリビア周辺では、白・シルバー・グレーといったシンプルカラーが好まれる傾向があります。派手な色やツートーンは現地での売れ行きが鈍くなることがある。この点は仕入れ前に確認してください。
修理部品が手に入りやすい点も日本車の価値を高める
日本車は世界中に普及しているため、純正部品も社外品も安定して流通しています。
ボリビアやパラグアイの街中でも、トヨタやスズキの部品なら入手できる。これは中国メーカー車にはまだない強みです。部品が入らなければ、どれだけ安くても使い続けられない。この現実が、日本車の中古市場価値を長期間支えています。
チリへ中古車を輸出する際に押さえておくべき実務上の注意点
先に知っておいてください——左ハンドルへの改造は必須です
チリおよびその周辺国(ボリビア・パラグアイなど)では、公道を走るために左ハンドルが法律で義務付けられています。
日本から輸出される車はほぼ右ハンドルですから、イキケの保税特区内にある専門工場で左ハンドルに改造してから再輸出されます。
この改造コストと品質管理がビジネスの損益に直結します。改造費が高い業者・仕上がりが雑な業者に当たると、トラブルのもとになる。イキケの改造業者の選定は、現地パートナーに確認するのが現実的です。
年式制限については、イキケ経由の場合は比較的緩やかなケースが多いですが、再輸出先の国ごとにルールが異なります。必ず最終仕向け国の規制を確認してください。
詳細は中古車輸出の国別規制でまとめています。
年式制限については、イキケ経由の場合は比較的緩やかなケースが多いですが、再輸出先の国ごとにルールが異なります。必ず最終仕向け国の規制を確認してください。チリの輸入規制の公的情報はJETRO チリ貿易・投資環境でも確認できます。
船荷証券(B/L)など通関で必要な書類と手続きの流れ
チリへの輸出に必要な主な書類は以下の通りです。
- 商業インボイス
- パッキングリスト
- 輸出抹消仮登録証明書または輸出予定届出証明書
- 船荷証券(B/L:Bill of Lading)
中でもB/Lは最重要書類です。荷送人・荷受人・車台番号・型式などの記載ミスが1文字でもあると通関が止まります。修正には時間とコストがかかる。書類作成は慣れた業者に依頼するか、ダブルチェックを必ず入れてください。
日本からチリ港までの平均的な輸送コストと所要日数
輸送はRORO船(ロールオン・ロールオフ船)が主流です。
- 所要日数:日本の主要港からイキケ港まで約30〜40日
- 輸送コスト目安:乗用車1台あたり15万〜25万円程度(車両サイズ・海運市況・燃料費で変動)
ただし、この相場は変動します。船会社への見積もりは都度確認が必要です。「前回と同じ料金だろう」という思い込みは、コスト計算の狂いを生みます。
チリ中古車市場の今後の展望と新たなビジネスチャンス
台頭する中国メーカーとの競争状況——日本車の優位性、実はここが大事です
南米市場での中国メーカーの価格攻勢は現実の話です。新車・中古車ともにシェアを伸ばしています。
ただ、現時点では日本車には「信頼性の蓄積」という中国車にないアドバンテージがあります。ブランド価値と安定した部品供給網、これが差別化の核心です。
価格だけで勝負しようとすると中国メーカーに食われる。「なぜ日本車でないといけないか」を現地バイヤーに説明できる輸出業者が今後も生き残ります。
ハイブリッド車への需要と排ガス規制「ユーロ6」への対応
チリでは環境意識の高まりとガソリン代の上昇を背景に、ハイブリッド車への関心が高まっています。
また、チリはユーロ6排ガス基準を採用しています。輸出する車両がこの基準を満たしているかどうかを事前に確認しないと、通関で引っかかることがあります。これを知らずに出荷してしまう初心者は今も一定数います。
UCARWORLDが選ばれる理由
チリ・ボリビア・パラグアイへの中古車輸出は、仕組みを知っていれば大きなビジネスチャンスですが、知らずに動くと書類ミス・改造コストの見誤り・為替ロス・色や車種の不一致など、複数の落とし穴があります。
UCARWORLDは、世界100か国以上のバイヤーと繋がるグローバルな中古車マーケットプレイスです。私(茶谷)自身が、TCV(旧トレードカービュー)の立ち上げ関与から始まり、1,000社以上の輸出コンサルを経て、カーペイディーエムを創業し豊田通商グループへのM&Aを経験してきた現場人間です。机上論ではなく、実際のトラブルと失敗を見てきた目線でサポートしています。
チリ向け輸出を検討している方には、「どの車種を・どの価格帯で・どのルートで」動かすのが現実的かを一緒に考えます。在庫車両の輸出可能性診断も承っています。チリを含む南米各国の市場動向は中古車輸出の国別マーケット状況でも詳しくまとめていますので、あわせてご覧ください。海外販売の入り口として、まずは気軽にご相談ください。
チリ向け中古車輸出|よくある質問
チリは右ハンドルのまま中古車を輸出できますか?
輸出自体は可能です。ただし、チリおよびその周辺国で公道を走るには左ハンドルへの改造が法律で義務付けられています。通常、イキケ保税特区内の専門工場で改造してから再輸出されます。
チリで特に需要が高い日本の中古車の車種は何ですか?
SUVとピックアップトラックへの需要が高いです。トヨタのハイラックス・ランドクルーザー、スバルのフォレスターが代表格です。色は白・シルバー・グレーが売れやすい傾向があります。
日本からチリまでの輸送日数と費用の目安を教えてください
所要日数は約30〜40日、費用は乗用車1台あたり15万〜25万円程度が目安です。海運市況や為替によって変動するため、正確な金額は船会社への見積もり確認が必要です。
まとめ
チリが日本中古車の巨大市場になっている理由は、「チリ国内で使うため」ではなく、イキケ保税特区を拠点にボリビア・パラグアイなど周辺国へ再輸出する中継貿易の仕組みにあります。
日本車の「壊れにくい」という評価が南米の過酷な環境で強く求められており、ハイラックスやランドクルーザーへの需要は今後も安定して続くと見ています。
ただし、左ハンドルへの改造義務・年式規制・書類手続き・ユーロ6対応など、実務上のポイントを外すと損失に直結します。市場の動向をつかみながら、確実に動ける体制を整えることが先決です。
海外販売を検討中の方はお気軽にご相談ください。 掲載希望の販売店様はお問い合わせください。 在庫車両の輸出可能性診断も承っています。

経歴
- カービューにて中古車輸出プラットフォーム「Tradecarview(現TCV)」を立ち上げ
- 中古車輸出未経験企業を含め、1,000社以上の輸出支援を実施
- 楽天グループにて海外EC展開・越境販売を推進
- 中古車輸出企業「カーペイディーエム」を創業し、豊田通商へ事業売却(M&A)
- 中古車輸出プラットフォームの立ち上げ・海外展開・M&Aを経験
- 現在はUCARWORLD(中古車輸出モール)の運営に携わり、出店企業様のモール上での販売をサポート